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2010/09/11

コブシ(辛夷)の果実

台風が去り、少し涼しくなって秋らしくなりました。散歩道の街路樹も少し色づき、赤い実もちらほら見えるようになりました。その散歩道でちょっと変わった形をした果実が目につきました。写真を撮り、家に帰ってその植物の名前を確かめたら、なんと、毎年、春先の3~4月、葉の出る前に、枝一面に桜が咲いたように花を咲かせるため「田打桜」の異名を持つコブシの果実でした。

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↑ コブシの若い果実(撮影 2010/09/10)

コブシ:モクレン科モクレン属。 落葉広葉高木。 原産地:日本 果実は長さ5~10cmの集合果。熟すと、袋果が裂けて、赤い種子が白い糸のようなもので吊り下げられ、やがて落下する。この白い糸は弾力性があり、引っ張ると伸びる。

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↑ 熟度が進むと色が赤くなる。「コブシ」の名前の由来は、果実が「握りこぶし(拳)」のようにゴツゴツしているところから名付けられたという。コブシだなんて、変な名前だな~と思っていたのですが、これを見て、なるほど、と納得しました。

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↑ 果実の袋が裂けて、中から赤い種子が顔を出しているのも見られました。

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↑ この赤い種子が白い糸のようなもので吊り下げられるようになるのはもう少し先のようです。

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↑ コブシは、つぼみの「ホウ」は漢方薬に用いられ、花からは「香水」が採れ、樹皮から「こぶし油」が採れる有用樹木です。

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↑ 枝にたわわについたコブシの実。 花は→こちら(2007年撮影)をご参照ください。

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↑ ところで、「コブシ」の漢字が、なぜ「辛夷」となっているのでしょうか。調べた結果は。

漢方では、コブシのつぼみを包む「ホウ」を採取して乾燥したものを「辛夷(しんい)」といい、鎮静、鎮痛、鼻炎などの薬として用いるという。

また、「辛夷」の語は、「辛くて野蛮」を意味する語のように見られるが、「化辛為夷」を語源とする語であるという。すなわち、苦しみ(辛)を化して平穏(夷)と為す」を意味する中国の古語に由来するという。ここで、「夷」が表の「野蛮」の意から裏の「平穏」の意に変わっています。コブシの実は一見醜いが、これが落下し、やがて春になると新しい世代が生まれ、薫り高い美しい花を咲かせて、人の心を癒してくれます。「辛夷」の語には、このような深い意味合いが含めらているようです。

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コメント

こんにちは
私も近くの公園でコブシの実を見かけました。
暑い日が続いていますが季節はしっかり移っていますね。
辛夷の謂れ、勉強になりました。

投稿: mico | 2010/09/11 10:47

mico さん、今晩は
コブシの花は、春先の花の少ない時に咲くので、よく目立ちますが、その果実はいつも見逃してしいました。今年ようやくお目にかかることができ、改めて調べてみたら、いろいろと役に立つ有用植物であることを知りました。

投稿: ぴょんぴょん | 2010/09/11 19:04

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