早春の里山に遠目には白い桜の花が咲いているように見えるコブシは、かつては農作業を始める目安ともされました。
このため、コブシの木は里人たちのシンボル・ツリーとしてに大事に守られて来ていたが、都市化された地域では大木のコブシは邪魔扱いされて、切り倒されたりするところも出てきました。
しかし、春先の花の少ない時期に花を咲かせてくれる貴重な花木として、最近では、市街化地域でも、街路樹や公園樹として植えられたりして街の人々にも目に触れる機会が多くなったのは嬉しいことです。
その、早春の花木コブシ(辛夷)の果実が熟して中から赤い種子が顔を覗かせ始めました。

↑ 果実が色づき始めたコブシの木(2015/09/15 撮影 )。
コブシ:モクレン科モクレン属 落葉高木 和名:こぶし(拳) 漢字名:辛夷
和名の「こぶし」は、果実の形状がこぶし(拳)のようにでこぼこしているのに似ているために名付けれた。漢字ではコブシに「拳」よりも「辛夷」を当てることが少なからずある。しかし、現在の中国では、「辛夷」は「モクレン」を指すという。

↑ 赤く色づいたコブシの果実。
多くの果実が左右対称形あるいは軸対称形の均整のとれた形状をしているのに対して、このコブシの果実は非対象形の果実です。

↑ どれ一つとっても同じ形状の果実はありません。実にユニークな形状をしているのに魅せられました。

↑ コブシは袋果の集合果で、当初は果皮が緑色であるが、登熟が進むにつれてピンク~赤色になり、さらに水分が消失して褐色になると果皮が裂けて中から赤橙色の種子(1個ないし2個)が出てくる。

↑ 種子に外力が働いて引っ張られると白い糸状のものが伸びて種子がぶら下がります。
この白い糸状のものは「珠柄」あるいは「種糸」と呼ばれています。

↑ 種子は2個ついているものは、それぞれの珠柄がのびて種子がぶらさがります。

↑ 注1:今回の珠柄(種糸)でぶら下がった種子の写真は筆者が手で種子を引っ張ってぶら下げたもので、自然に珠柄が伸びてぶら下がったものではありません。珠柄が自然に伸びずに、種子は殻つきのまま落下する方が多いと報告している文献もあります。
注2:名前の由来については拙ブログ(2010/09/11UP)にも記載されています(ただし誤謬があるかも知りません)。